日本のものつくりを支える集団


The Group of The Japanese Craftsmen

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2025.10.18-19

10月18日(土)~19日(日)まで、技の会メンバー6名にて、
「新潟・燕三条の工場見学ツアー」を行いました。





最初に訪問しましたのは、「玉川堂」さま。
金槌で銅板を叩き、立体的に造形していく 「槌起(ついき)」の技法で、
主に湯沸(薬缶)や茶器などを作製・販売している会社です。

創業は江戸時代後期からということで、まず工場に入る手前から、文化財レベルの店構えに圧倒されます。



一日中響く槌音から、耳を守るために高く組まれたという天井の下で、
10名ほどの職人さんが一心不乱に銅を叩く姿は、おそらく100年前とそう変わらない光景なのだと思うと、とても感慨深いものがありました。

その後は形状の出来た湯沸に、薬品を用いて着色する工程を説明していただきましたが、
段々我々がマニアックな質問をぶつけていくので、一般の見学客じゃないことがガイドの方にも伝わり、技術的な話がどんどんと弾んでいきます^^






ちなみに今回、見学のガイドを務めていただいた方は、刀の鍔の製作もされていて、偶然にも技の会会員のJAP工房・川上さんの弟弟子にあたる方と分かりました。
今月から明治神宮の宝物殿にて開催される、 LinkIcon日本刀の匠展」 のこともよくご存じで、世間の狭さに会員一同驚くとともに、職人どおしの見えない繋がりに感動したひと時でもありました。




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次に訪問しましたのは、爪切りで有名な「SUWADA」さまです。
こちらは、先ほどの玉川堂さんとは打って変わって、現代的な工場構えで、一見すると工場というよりもおしゃれな観光施設といった佇まいでした。



中に入ると、カフェや食堂・売店、それから洗練されたオブジェがあちこちにあり、私達のイメージにある「町工場感」をあっさり裏切ってくれます^^
実際の工場があるのは地下1階。すべてガラス張りのオープンな状態になっており、そこで20名ほどの若い職人さんが磨きや検品の作業をされていました。
品物を光に透かして、刃と刃のかみ合わせや狂いは無いかを確認し、何度も微調整している職人さんがいましたが、
確かに売店で試し切りさせてもらった爪切りは、これまで自分が使ってきたものとは別物で、パチンと切れるのではなく、しっとり滑らかに切れる感じがして、別次元の品物でした。





こちらの工場で感じたのは、職人さんの圧倒的な若さです。
東京ですと、自分が20代のころから今現在(48才)まで、いつまでたっても若手なわけですが^^;、先ほどの玉川堂さんやこちらのSUWADAさんは特に、20代と思われる若い職人さんが多数作業されていました。
工業が主な産業の町として、民間企業と行政とで、上手く連携が取れているのかな、という気がしました。




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この日最後に訪れましたのは、美容師さんなどプロの使うハサミを作っていらっしゃる「コスモ・スミス」さまです。



こちらの工場に来てまず感じるのは、圧倒的な機械の多さです。
のちのディスカッションの時に、社長の栗林様が仰っていられましたが、作業員よりも機械の方を多くしているとのことでした。(ちなみに工場の人員は9名)
我々も「機械が欲しいね」とは、よく事あるごとに話たりはしますが、スペースの問題などでなにかと理由を付けてあきらめてしまうことが多いです。
しかし社長様の凄いところは、スペースがあるという条件は有るにせよ、実際に行く先々の機械屋さんで気になった機械を譲ってもらい、自社仕様に自分でカスタマイズしてどんどん機械を増やしていく。
そうやって実際に設置されている機械の半端ない量を見てみると、事業を長く継承して行く気概のようなものが感じられるのでした。
ちなみに社長様ご本人の休日の過ごし方は、車を分解してその作りの緻密さを各社で比較しているとのこと^^。 機械が人よりたくさんあるのも頷けるお話です。






工場見学では、用途別の数種の鉄板からはじまり、プレス・抜き・磨き・検品まで、すべての工程を惜しげもなく見させていただきました。
中でもIHI製の億近い真空窯の威容は圧巻で、そのメンテナンスの頻度・金額も、我々小さな町工場にとっては桁違いの驚きでした。



社長さまのお話で印象に残ったのは、コスモ・スミスという社名に託された、お世話になった修業先の社長様への熱い思い。
それから、若い職人さんの入社は確かに多いけれども、大成するには「辛抱強さ・負けん気の強さ」が何よりも大事、というお話。
そして最後におまけで、地元の有名企業かつ幼馴染である、スノーピークとキャプテンスタッグの比較のお話^^;
どれもためになって、楽しく、そして大きな学びのあるお話でした。






工場を去るころには、今回の旅で唯一の雨(結構土砂降り)に遭遇。
若鍋さんの運転で、本日のお宿「海華亭 かわい」に向かいます。



晩御飯はカニの他にも魚を使った料理がいろいろとあり、大満足。
甲羅酒を多めに飲んで(飲まされて?)関会長はしばしダウンでした^^;
露天風呂はなぜか他のお客さんが来ることも無く、独占状態のまま2時間近くゆるゆると入り続け、楽しい時間が過ぎていきました。







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2日目は、まず弥彦神社に向かいます。
若鍋さんや坂本さんが手がけた、神社の御守を確認しつつ、
杉の香りがまだ満ちている豪華なトイレ施設の中で、疑似会長選挙の戯れ^^;







次に向かったのは先日の栗林社長様よりオススメしていただいた、「三条鍛冶道場」。



残念ながらこの日の鍛冶体験の受付はすでに終わっていたのですが、
ここで「燕三条 工場の祭典」の発案者である池野様に偶然お話を伺う事が出来ました。
そもそも今回の研修旅行は、この「燕三条工場の祭典」に伺いたくて企画されたものでしたが、
残念ながら日にちの都合がつかず、その2週間後である今回のツアーとなったのでした。
祭典をはじめられた経緯や、幕末から明治にかけて燕三条がどういう人たちの尽力によって発展したかなど、
町の理解を深める貴重なお話を伺う事が出来ました。





お昼は、燕名物の背油ラーメンを食しに「らーめん勝」へ。
背油ラーメンももちろん旨かったのですが、我々の関心はそのどんぶりに。
めずらしいことに、ステンレスのヘラ絞りで作られたものの様でした。
また、どんぶりにマーキングされたお店の屋号も、「これは印刷じゃなくてレーザー彫刻かな?」などと、
ものつくりの方にどうしても関心が向かうのでした^^;



新幹線が来るまでの時間を使って、
「道の駅 燕三条地場産センター」での買い物や、隣の「産業振興センター」にて、地元企業が手がけたデザイン賞受賞の品々を見学し、帰路につきました。




地元の方たちとの出会いに恵まれた、楽しくも学びの多い研修旅行でした。




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